泣いても笑っても日日是好日

人生は一期一会の連続。平凡な毎日でも、泣いても笑っても…

本の紹介 宮城谷昌光著『太公望』…主役がかっこいいと、読むのが楽しい。

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1.はじめに

 

今日は、リクエストもありました大好きな本の紹介をしたいと思います。

今日紹介する本は、宮城谷昌光著『太公望』。

この本は以前ブログでちょっと触れたことがあったのですが、今日はもっと具体的に紹介させていただこうと思います。

 

が…

本の紹介は初めての試みなので、記事の拙いところはどうぞ目をつぶってくださいね。

 

太公望』は主人公が父親を殺され、復讐を誓い、理想の社会を作ろうと、ひたすら突き進んでいく歴史小説です。

全体的に固くなく、会話が多いので、読みやすいと思います。

 

歴史に全く興味のない、今は亡き私の母に読ませても、面白いといってくれた小説です。

 

2.太公望とは何者?

 

ところで、魚釣りをする人のことを太公望と言いますね…。

また、覆水盆に返らず…という故事も太公望にかかわりがあるのです。

 

 

小説のかっこいい印象と180度違うウイキペディアの太公望 ↓

 

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太公望像  引用:ウイキペディア より

 

 

太公望(?~?)は、中国の人です。

中国の歴史で殷→周→秦→漢と、交代する王朝を世界史で覚えたなぁと、思われる方もいらっしゃるのでは?

太公望は、その周王朝の建国に力を尽くした軍師です。

周は、紀元前1046~紀元前256年の王朝と言われてますから、もう3000年も前のお話になります。

「漢委奴国王」の金印で有名な、奴国の王様が漢に使いを送ったのが57年。

この時より、更に1000年昔の話ですよ。

気が遠くなりそう。(笑)

 

ある時、周の文王が釣りをしている老人に出会い、

「太公が待ち望んでいた人物(太公とは文王のお父さん)である」

と言い、老人を太公望と呼び、周の軍師にした…

転じて魚釣りをする人=太公望と言われるようになったとか。

 

もう一つの「覆水盆に返らず」という故事は…

太公望ががまだ偉くなってない時に、奥さんが太公望に愛想をつかして家を出て行ってしまった。

その後太公望が出世してから、奥さんが復縁したいと言った時に、太公望がお盆に入ってた水をひっくり返して、この水みたいに元に戻すことはできないんだよ…

と言った、というお話が由来となっています。

 

 

さて、

太公望の名前は呂尚と言われています。

太公望は周の文王、武王、成王に仕え、殷に代わる王朝を周が建てる時に活躍した人です。

周が、殷(小説では商)に代わって中国を統一すると、現在の中国の山東省付近に封ぜられ、斉と言う国を作ります。

 

太公望についての教科書的説明はこれぐらいにして、小説太公望についてお話ししましょう。

 

3.『太公望』のあらすじ

 

太公望』の小説は、太公望(小説では望)の部族(呂族)が殷(小説では商)の最後の王紂王(小説では受王)の、人狩りに逢い、望を含め命からがら6人の子どもが逃げ出すところから始まります。

 

望は最年長ですが、少年となってます。

望ともう一人を除く4人は、12歳未満とのこと。

望は15歳くらいの設定でしょうか。

 

望の父親は呂族(羌族の部族の一つ)の族長で、人狩りの犠牲となりました。

生き残った望たち6人の子ども達は、受王への復讐を誓います。

我に七難八苦与えよ~ではないけれど、望たちは敵対する部族の捕虜になったり、手助けしてくれる部族との交流をへて、成長していきます。

そして、朝歌という商の副都に拠点を置き、商を打倒する機会を覗います。

そして、周の文王こそ商王朝を打倒すべき主君だと見定め、文王に、文王亡きあとはその子の武王に仕え、商王朝を滅ぼします。

 

 

4.感想

 

望は、感情に流されす、理論的に物事を考え、先の先まで考える人物として描かれています。

人の心を掴むのがうまく、とにかく頭がいい。

また武術にも優れ、文武両道の人です。

 

私が頭がいいというのは、先の先を読んで行動するというだけでなく、人の心をよく読んで、顔を潰さないように、相手を傷つけないように、気遣いをすることができる(ただの忖度ではありませんよ。)そういう意味です。

 

後に主君となる周の文王でさえ、望の手のひらで動かされていたという凄さ。

 

(周の文王が、商の受王に投獄されていましたが、望の暗躍で冤罪と分かり、獄から放免され、多くの族長と民に歓声をもって迎えられました)

しばらく無言で車体をみつめていた周公は、

「望という男は、わしに受王を伐たせようとしている」

と、つぶやいた。(本文より)

 

 

 いつのまにか商を打倒する駒とされていることに、文王は気づきます。

この後、望は周に仕えるようになります。

 

 

 

 望は、利益を独り占めにはしません。

 

(望と交流がある豪商だったが、商に謀反を起こした諸侯とかかわりがあり、斜陽の道をたどっていた鄭凡に、望が周が扱う兵車の売買を任せようとするところ)

鄭凡は目をうるませ、頭をさげた。何から何まで望は考えぬいている。しかも利益を分配してゆく。羌族に独占の発想がないといえばそれまでであるが、みごとであるとしかいいようがない。(本文より

 

 

小説の最後の方になりますが、周が王朝をたてた後、望たちは斉という国を作ります。

斉とは等しいという意味で、この一文字が望の思想を体現していますね。

 

 

 

 

さて、周と協力するようになってから、望たちは商から脱出し、周に移住します。

そして、望が族長となって、新たに邑(集落)をつくります。

その邑には、生粋の呂族だけでなく、望を慕う色々な出身地の人々が混じっています。

 

次の引用は、私の一番感動した、呂族の邑をつくる儀式のくだりです。

 

人狩りの火の手が上がる中、子ども達6人が命からがら逃げて、ようやく呂族の集落を再興することが出来たのです。

 

私が想像するに、望が20代後半くらいの時でしょうか。

 

 

「笑いごとではない。祭壇はわが族を守護してくれる山霊が降下するところであり、室も神聖な建物である。わが族の長である望よ、矢を射よ。矢の至った地に宮室をたてる」

厳粛さをくずさない班に弓矢をもたされた望は、虚空にむかって矢を放った。(本文より)

 

 

ところで、望は恋愛については少し疎く、望に思いを寄せる女性は何人かいますが、皆それぞれの立場をわきまえるというか、本格的な恋愛までは至りません。

そのプラトニックさが、爽やかな余韻を残します。

 

まぁ、今でいう精悍な顔つきのハンサム青年だったのでしょうね、望は…。

 

 

わたしにとって、望が周に仕えるまでは、一緒に泣いたり笑ったりハラハラドキドキと、身近な存在だったのですが、周に仕えた途端、周王の軍師という、小説の中なのに雲の上の遠い存在となってしまい淋しくなってしまいました。

 

 

 

話が飛びますが、文武両道って日本でいえば誰でしょう?

過去の大河ドラマを思い起こしてみました。

真田幸村直江兼続黒田官兵衛

役者さんは、それぞれ堺雅人さん、妻夫木聡さん、岡田准一さんでしたね。

う~ん、堺雅人さんは、にこにこ笑っていて鋭い目の印象はないし、妻夫木聡さんも優しいイメージ。

だとしたら岡田准一さんかな。

日本で、もし映画化されたらという事で、勝手に望と岡田准一さんを重ね合わせてみました。(笑)

 

以前、記事にしたこと(↓の記事です)がありましたが、私はどうも、ドラマでも、小説でも、主人公にかっこいいという印象を持つだけで、夢中になってしまう傾向があるようです(笑)。

 

 

gracedusoleil252525.hatenablog.com

 

 

 

因みに、この小説は地図を見ながら読むのがおすすめです。

私の持っている文春文庫の本は地図が載っているので、どこに行ったとか、どこで泊まったとか分かりやすかったですよ。

 

5.『太公望』の作者と初出

 

作者:宮城谷昌光

初出:「産経新聞」平成8年1月3日より10年3月31日まで連載

 

 

 

 

 

過去ブログもどうぞ。

 

gracedusoleil252525.hatenablog.com

 

 

 

今日も…日日是好日

 

 

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